プロのシャインマスカット農家のアドバイスを元にシャインマスカットを育てて6年目の筆者が、家庭菜園でのシャインマスカット栽培の体験・コツを紹介しています。
このページでは、シャインマスカットの実が茶色いしみになる「かすり症」の原因と、具体的な対処法についてお話ししています。
シャインマスカットに茶色いしみ!! 「かすり症」の原因と対処方法
シャインマスカットに茶色いしみ!!

8月下旬、家庭菜園のシャインマスカットにかけた袋がパンパンに膨らみ出し、9月の収穫まであと少しになりました。
糖度確認の為ため袋をはずしてみると、シャインマスカットの実に「茶色いしみ」を発見してびっくり。1房のうち7割の粒に、うす茶色のまだら模様が・・・

いつから、こんな風になっていたのか、
袋と傘が緑色のため、暗さが倍増して解りにくく、気付かなかったのか?
いやいや、糖度確認(1粒食べるw)は毎日していたので、
最近、茶色くなったことは間違いありません。
家庭菜園で育てているシャインマスカットなので、出荷はしませんが、今年は良い出来の房が150房近く育ちました。
何カ月も大切に育てて、いよいよ収穫という時にかなりのショックです。

そこで、ぶどう棚のあちこちの袋をはずして見てチェックすると、
全体の20~30%ほどがやられていて、
どうやら、陽当たりが良く成熟している実に多いことが解りました。
シャインマスカットの茶色いしみの原因
すぐに、シャインマスカット農家の叔母に電話して状況を話すと、「かすり症」か「チャノキイロアザミウマ」の仕業とのこと。
「チャノキイロアザミウマ」とは、ぶどうの葉や果実に寄生して吸汁する害虫です。
あわてて消毒を行いましたが、「かすり症」もよく似ている症状が出るとのことで、いつもお世話になっているJAアグリさんに相談に伺いました。
「かすり症」と「チャノキイロアザミウマ」との見分け方・消毒方法については、別記事で詳しく解説しています。
シャインマスカットの「かすり症」の原因と対処法

JAアグリの相談員さんに写真を見せると、これは「かすり症」で間違いないとの事でした。
ぶどうの「かすり症」とは、成熟期になると果面にかすり状の茶色いシミが現れる果皮褐変障害(通称 かすり症)のことで、シャインマスカットなどの黄緑色品種に多いそうです。
糖度が18度以上になって収穫近くになると発生しやすく、原因は、次の4つが考えられているそうです。
1.土壌の栄養不足(カルシウム不足)
島根農業技術センターの研究報告では、かすり症の原因は、病害虫や裂皮のような物理的現象ではなく、土壌の栄養不足(カルシウム不足)などによる生理的現象であること記載されています。
Aアグリの相談員さんによると、シャインマスカットの場合、土壌の窒素成分が多いとカルシウムの吸収を阻害してしまうとのこと。
窒素成分と言うと、植物の三大栄養素の中で一番重要とされているので、びっくり。
多すぎてもダメなんですね~

私がシャインマスカットの根本に菜園を作り、茄子やきゅうり、紫蘇の葉、バラの花などを育てています。
菜園の周りに、鶏糞や化成肥料を2回追肥したことを話すと、
それが原因だね~
なんて話になりました。
つまり、窒素成分が多い肥料を、シャインマスカットの根元にあげすぎた事がカルシウム不足を招き、「かすり症」の原因になったのです。

あらかじめ撮影しておいた、シャインマスカットの葉の様子を見せると、連作による「微量要素」不足も判明、やはりカルシウム不足で間違いないだろうとの事でした。
ぶどうの微量要素欠乏症については、別ページで詳しく解説しています。
シャインマスカット「かすり症」の対処法 カルシウム不足に効く肥料

シャインマスカットのカルシウム不足の対処法として、JAアグリの相談員さんが紹介してくれたのは、「全農 JA畑のカルシウム」です。
多くの山梨のシャインマスカット農家さんが使うカルシウム剤です。
「全農 JA畑のカルシウム」は、石膏を使用し、水に溶けやすい硫酸カルシウムを主な成分とする粒状肥料です。
土壌pHを上昇させずに、カルシウム分を補給できるので、安心して使えるシャインマスカットの強い味方とのこと。

裏面の説明&公式HPを見ると、「効き目がありそう~」な記載がいっぱい。
カルシウムと聞いて、勝手に、石灰でもまけばいいのかな?
なんて思っていましたが、ダメダメ。特殊なカルシウム剤のようでね。

相談員さんによると、使い方は、10月~11月の落葉前に、肥料と一緒に畑一面にまくそうです。
まきおわったら農家さんは耕運機で浅くかき回すそうですが、家庭菜園では、散布後、土をかじって混ぜてあげると良いとのこと。
今年の施肥量は説明書どおりに与えますが、翌年は土壌に残存する事を考えて「半分の量」を施肥するよう教えてくれました。
収穫間近なんだけど、なんとかならないの?

収穫間近なので、今すぐ「かすり症」をなんとかしたい!! ところですが、
「一度、かすり症になり茶色い斑点が出てしまうと、もう元には戻らないよ。秋になったらしっかり土壌づくりをして、来年は、緑色の綺麗な房を作りましょう」との事でがっかり。
糖度18度以上になると発生しやすいので、完熟させず、早めに収穫して出荷する農家さんも多いそうです。今年は諦めるしかないようです。
とりあえず、少しだけカルシウム剤を散布しましたが、秋になったら、きちんと土づくりするしかないですね。

でも、この「全農 JA畑のカルシウム」、20kg入りで、家庭菜園には大量!!
しかも、農協さん直営店舗でなければ手に入りません。
そこで、おなじ成分で、家庭菜園向けの小さなものを探すと、ぴったりの物を見つけました。
サカタのタネさんが発売している野菜畑にカルシウム 5kgです。
「全農 JA畑のカルシウム」との成分比較を記載するので参考にしてください。
全農 JA畑のカルシウム | 野菜畑にカルシウム 5kg |
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![]() | ![]() |
全農 | サカタのタネ |
粒状肥料 | 粒状2~5mm |
石膏(りん酸石膏)を使用し、水に溶けやすい硫酸カルシウム | 石膏を原料に作られた、硫酸カルシウムが主成分の水に溶けやすい硫酸カルシウム |
通常の石灰質資材と異なり、土壌pHを上昇させずに、カルシウム分を補給できる | 土壌のpHを変化させることなくカルシウム、イオウの補給が可能となります |
pH5.1 イオウ17% | 主成分の石膏(pH5~7) イオウ |
2.猛暑や、急激な気温の変化・または日照不足
急激な寒暖差は、シャインマスカットの「かすり症」の原因になります。
今年は異常気象で、短い梅雨が終わると、すぐに30度を超える猛暑日が続きました。
まだ6月だったので明け方は冷え、急激な寒暖差があったことが「かすり症」の原因ではないかとの事で、今年は「かすり症のシャインマスカット農家さん」多いよ~と話してくれました。

しかも、我が家のシャインマスカット棚は、ガス給湯器の近くにあるので、ガスを利用するたびに熱風がぶどう棚の下に流れ込みます。
確かに、ガス給湯器の近くのほうが「かすり症」の粒が多めでした。
エアコンの外扇機もあるし・・・
吐き出された生活暖気も、シャインマスカットに悪影響を与えているのでしょうね。
また、逆に日照不足も「かすり症」の原因になるとの事。
農家さんは、ジベレリン時期から収穫前前まで、ぶどう棚の下に反射シートを敷くことで光合成や、成長促進し、チャノキイロアザミウマなどの害虫よけするのですが、
シャインマスカットの場合、逆に色を悪くしてしまうケースがあるので、雨が続く日照不足時にだけ行うか、まったくしない農家さんがが多いとの事でした。
3.水不足

水不足も「かすり症」の原因となります。
特に、家庭菜園でのブドウ栽培には「水やり」に注意が必要です。
「家庭菜園の場合、暑い日は「朝夕」2回、たっぷり水やりをしなくちゃだめだよ~」と、相談員さん。
叔母のシャインマスカット農園では、朝夕、15分~30分ほどスプリンクラーで自動的に水やりされますが、我が家にはそんなものありません。
今年は猛暑日が多かったので、たっぷり夕方に水をあげていたつもりが、やはり足りなかったのですね~反省
4.有色の傘・袋をかけていない

また、山梨果試研報の実験よると、シャインマスカットの袋・カサかけにおいて、有色および不織布製の資材を用いることで果皮色の黄化を抑制、
カサだけでなく袋をかける事で「かすり症」の発生を減少する事ができるそうです。

そういえば、去年、シャインマスカット農家の叔父が「これ、良いぞぉ~」と、勧めてくれたクラフト用紙の傘を使わなかったんですよね。
袋は緑色を使用していましたが、傘は、昨年買いすぎた「緑色の傘」(写真の右側)を使ってたんです。
来年の傘は「クラフト紙」に変更します。
ぶどうの傘かけ・袋掛けの重要さ、遮光ネット日焼け対策方法については、別ページで詳しく紹介しています。
まとめ シャインマスカットに茶色いしみ!! 「かすり症」の原因と対処方法
シャインマスカットを育てて6年目。
収穫間近の粒の茶色いしみは「かすり症」であることが解りました。
何度も言いますが、大切に育ててきたのにほんとうにがっかりです。
葉の色合いの悪さに気づいていましたが、ハダニのせいと消毒を強化ばかりしていました。

「かすり症」の主な原因は「カルシウム不足」ですが、その他の原因は、シャインマスカットに寒暖の差や水不足などのストレスを与えると発生することが解りました。
また、かすり症は「房を大きく作りすぎ、粒を沢山つけすぎ」で発生するという説もあります。
出荷しない我が家のシャインマスカットも、少し大きめに房を作ったので関係しているのかもしれません。
昨年100房➡今年150房と、房数も多いです。
たしかに8月頃から、実の色が「例年より薄い」とは感じていましたが、大丈夫だろう・・・と単純に考えていました。
おかしいと感じたら、すぐに行動しなければダメですね。
粒数や房数を減らし、「微量要素」や「カルシウム剤」を与えていれば、被害が出なかったかもしれません。
秋にばっちりカルシウム+肥料対策をして、来年は「かすり症」の発生がない事を祈ります。
相談員さんによると、プロの農家では、数年おきに土壌分析をして、土壌と作物に合った肥料を使うそうです。
一般の人向けに、土壌診断、肥料のアドバイスをしてくれるサイトもあるので、ひどい被害の場合は利用しても良いですね。
それでは、素敵な家庭菜園ライフを楽しんでください。(^^)/
参考文献
島根農技研報 シャインマスカットにおけるカスリ症の発生と果皮中無機成分含有量との関係
山梨果試研報 各種袋・カサ資材利用によるブドウ「シャインマスカット」の果皮黄化抑制および「かすり症」発生軽減
滋賀県農業技術振興センター シャインマスカット栽培の手引き