家庭菜園でのぶどうの剪定は難しく考えがちですが、基本やコツを守れば素人でも失敗することはまずありません。
ここでは、専業農家から直伝されたシャインマスカットの剪定方法を図で解り易く解説しています(シャインマスカット以外でもOK)。
沢山の実を育てるためにもぜひ、剪定にチャレンジしてください。
勢いよく伸びた枝を折らないための「誘引のコツ」についてはこちらのページで解説しています。
ぶどうの剪定方法★シャインマスカット1.2.3年目ごとに図で解説・剪定時期・芽かき・摘心・誘引など
始めの1歩 選定の心構え
初めに、素人の剪定の心構えとして言えるのは、
という事です。
これは、プロのシャインマスカット農家の「いとこ」に言われたことです。
実は、私も剪定が解らず、2年間、剪定をせずにもじゃもじゃにした時期があります。
我が家の親戚には「3軒」も果樹農家がいてシャインマスカットなどを育てています。
困っていた私を見て、祖母が3軒に片っ端から声をかけたらしく、次々と叔父・叔母・いとこがやってきて剪定方法を教えてくれました。
ところが地域差がある為か、それぞれの家のやり方が違ってたいへん~ww
このブログでは、その中で家庭菜園に向いている方法を「良いとこどり」して書き残しています。
特に、家庭菜園では「型決め」「芽かき」「摘心」の3つのコツを守れば、しっかりとしたブドウ棚になり、美味しい実がたくさん実ります。
勇気をもって挑戦してください。
剪定の用語を覚えよう
次に、指南書や専門サイトでよく使われる剪定用語を2つ紹介します。
この2つの用語は後に具体的に出てきますが、覚えられなくても、とりあえず頭にとめておくほどで大丈夫です。
摘心
新しく伸びてくる茎・枝を途中で摘み取ること。この「摘心」をすることで脇芽の成長を促し、実も大きくなります。「芯止」めともいいます。
芽かき
1つの場所に沢山芽が出ている時、副芽(ふくが)を取り除くことにより、梢の勢力をそろえてよい枝や実にすることができます。これを「芽かき」といいます。
前置きが長くてすみません。
それでは1年目から紹介しますね。
シャインマスカット1年目の剪定
どんなぶどう棚にするのかイメージする
1年目のシャインマスカットの苗は、それほど大きく成長しません。
ですから剪定の出番はあまりありませんが、将来どのような棚にしたいかイメージして植える事が重要です。
1年目は、とにかく枝を伸ばしてみます。(剪定は翌年の1月に行うので、のばしたままでOK です)
苗木にもよりますが初年度は1~2mほどしか伸びません。
何も考えず我が家のように、ウジャウジャ伸ばしてしまうと後から大変なことになります。
自分の庭の広さや畑の形状を考え、まずはどんな型のブドウ棚を作るか想定してみましょう。
ブドウ棚の3つの型を紹介しますね。
3つの型
下の図は、主なブドウ棚の3つの型です。家庭菜園であれば「I型」「V型」がお勧めで狭い土地や細長い土地でもOKです。
I型 | H型 | V型 |
---|---|---|
下の写真は叔父の果樹農園(シャインマスカット)で「H型」を広くした「HW型」です。
最初に主枝を2股に分け、そこからさらに2股に90度に伸ばし綺麗なH型になっています。
この整列された枝にブドウが房を付けるので、叔父いわく、うじゃうじゃ伸ばすより作業がしやすくなるそうです。
でも、叔母から言わせると「H型は余計なものをカットし整頓しなければならないので収穫量が減ってしまう」とのこと。
どっちがいいんだ~?(笑)
そこでさらに調べてみると、
H型は「広い土地向け」で主枝が8~9m、横幅が5~9mも必要。
つまり家庭菜園には不向きなんですね。
広い土地がある場合はH型で良いですが、家庭菜園には収穫量が多い「I型」「V型」がおすすめです。
シャインマスカット2年目の剪定
シャインマスカット2年目は、ぐんと主枝が伸びるので理想の型になるよう「芽かき」を中心に行います。
ぶどうの芽かき
4月中旬になると、萌芽が枝の節に沢山出てきます。1つの場所に沢山芽が出ている場合、梢の勢力をそろえてよい枝や実にする為に「芽かき」を行います。
芽かきを行う事で、育てたい枝に栄養を集中させます。
「芽かき」のコツは、基本的に勢いの良い2つの芽を残します。ただし、上下の方向に生えた芽は切り取ります。
V型にしたい場合は、勢いの良い大きな枝が2本だけ残して剪定し、「芽かき」していきます。枝が多すぎると栄養が分散されてしまいます。
芽かきのコツ
「芽かき」で特に重要なのが、芽の向きです。
上向きや下向きのものを生かしたし場合、伸びてから上下に勢いよく伸び、思ってもいない方向に伸びてしまい誘引に苦労します。
できるだけ、伸ばしたい方向(横方向)の芽を残すことが良いブドウ棚づくりのコツです。残す優先順位は、伸ばしたい方向に生えてきた横の芽>下の芽>上の芽です。
我が家の場合、限られた長方形の細長い土地なので、自然と「I型」となりました。「I型」どころかくねくね曲がった「へび型」といった方がいいかも(笑)
下の写真は、2年目、3年目の我が家のブドウ棚です。
シャインマスカット3年目の剪定
ぶどうの剪定時期
3年目に入るといよいよ本格的に「冬の剪定」を行います。春からは、2年目と同様の「芽かき」+「摘心」を行います。
家庭菜園の場合、次の3つの時期に行います。
冬の剪定方法
冬の剪定は夏の間に長く伸びた枝をきり詰めます。農家では、すべてのブドウの葉が落ち寒い冬を迎えた1月中旬から「冬の剪定」がはじまります。
★剪定時には、害虫駆除も同時に行います。
枝に、琥珀色のゼリー状の樹液がついていたらブドウスカシバ、
変色して膨らんだ枝がポキッと折れるならブドウトラカミキリを疑ってください。
(害虫名をクリックすると、対処法のページに進みます)
上の写真は親戚の農家が今年の1月30日に行った剪定の様子です。冬の剪定の時期は12月下旬に行う農家もありますが、ご自身の都合で1月中には終わらせるようにしてください。
我が家の家庭菜園は1月中旬に行いました。
うっかり春に剪定したら、切り口から水が!!
という方は、ぶどう剪定時期に注意★切り口から水が!!止める方法は?ぶどう樹液化粧水の作り方を参考にしてください。
ぶどう剪定/図解でコツを知る
剪定のコツを図で紹介します。
枝には2年目の細い枝や3年目の古い枝があります。2年目の細い枝は図のように主枝から出ている「基定芽」を残して切ります。
3年目の太い枝は1芽目のしっかりとた芽を残して剪定するのが基本です。2年目のように基定芽で切ってしまうと、花穂(ブドウの実)が少なくなる傾向があるので注意が必要です。
私が初めて剪定した時は「こんなに切ってしまって大丈夫?」と、とても不安でした。
4月を迎え、自分が剪定した枝の部分から次々と萌芽が出た時は、自分のやり仕方が間違ってない事が再認識でき、とてもうれしかったです。
何年目の枝か解らない時は、念の為、1芽目を残して切るとよいです。
3年目以降の、実際の剪定記録はこちらです。参考にしてください。
また、この冬の剪定時に行う害虫駆除では、不自然な枝の膨らみや、ゼリー状の樹液が出ているなどをチェックします。害虫の詳しい駆除方法はこちら
春の剪定 芽かき
春になり芽が出たら2年目で説明した「芽かき」を行います。3年目なので脇枝もぐんぐん伸びるのでさらに「誘引」や「摘心」も必要です。
この時期、害虫駆除のための消毒も大切です。
黒とう病の消毒も、この時期に行うことでかなり防ぐことができます。
春から初夏への黒とう病対策はこちら
初夏の剪定 摘心
5月中旬になると、枝が勢いよく伸びて「誘引」の必要が出てきます。誘引時には「剪定」は行いません。「誘引のコツ」についてはこちらのページで詳しく解説しています。
6月~7月にかけて葉が勢いよく伸びてきたら、先端の伸びを切って抑える「摘心」をします。「摘心」をする事で、脇芽の成長を促し頑丈な枝になり、実も大きく育ちます。
摘心の方法
叔父に教わった摘心方法は、ぶどうの房から先の7~8節残す方法です。
これは、神奈川県農業技術センターでも推奨された方法で、プロのシャインマスカット農家が実践している方法です。
わ~なんだか大変そうと叔父に言うと、家庭菜園用に「簡単摘心方法」を考えてくれました。
家庭菜園用 簡単 摘心方法
家庭菜園の摘心は、5月中旬から7月にかけて行います。
この頃には、1枝に1房、小さなぶどうの房が実っているはずです。2房あった場合は、栄養を集中させるため1房切り落とします。
次に勢いの良い枝の、12枚目の葉の先を切り取ります。
家庭菜園は狭く、隣の敷地に枝がびよ~んと行ってしまっても、葉が9枚以内の摘心は絶対禁止です。
9節以内で切り落とすと、大きな果粒肥大にならないと立証されているからです。
研究資料はこちら「ブドウ優良品種の特性調査と栽培技術の確立」
長く伸びた枝は、誘引してあげてくださいね。折れやすい枝の誘引のコツはこちら
次に、重なった葉を切り落とします。
摘心は5月下旬の開花前に行うと栄養がいきわたり、大きな粒の実が期待できます。
◆実際に「摘心」をした後・・・
実際に摘心して感じたことですが・・・
摘心後、1カ月もすると切った場所や、他の葉の付け根から若い枝がどんどん出てきます。
脇枝(副梢)ですね。
これがまたうじゃうじゃ(笑)
初夏は枝の勢いが良い時期なんですね。
そこで、叔父に電話をして聞くと、
「副梢は、葉を一枚残して切ってしまうと良いよ。」
との事で、切断。
風通しがよくなりすべての葉が日に当たり、これで、葉と実に栄養がいきわたりました。
その後にもどんどん枝が生えてきますが、あまり勢いがないものはそのまま残しても良いそうです。
まとめ ぶどうの剪定方法★シャインマスカット1.2.3年目ごとに図で解説・剪定時期・芽かき・摘心・誘引など
4年目の我が家のブドウ棚はこちら。ジベレリン2回目をした後で笠かけの前です。
沢山房を付け、けっこういい感じです。
最近ではちょっとした小さな庭でもブドウを育てている家庭を見かけます。
夏の日避けにもなりますし、特にシャインマスカットは病気さえ気を付ければ育てやすく家庭菜園にはお勧めです。
ぜひ皆さんもチャレンジしてみてくださいね。
➡5年目の我が家のシャインマスカットの様子は、ぶどうの傘かけ・袋掛けの時期と、遮光ネット日焼け対策の方法の文末で見ることができます。
★季節ごとのシャインマスカットの手入れが解る「栽培・消毒カレンダー」はこちら↓
シャインマスカットの記事一覧はこちら