プロのシャインマスカット農家三軒のアドバイスをもとに、我が家のシャインマスカットに発生した
を写真でわかりやすく解説しています。
前回の、「ぶどうの病気3」のその後の様子、防除した後の収穫量なども紹介。
消毒の毒性や、農薬を混ぜて良いのかなども解説しています。
ぶどうの病気4.シャインマスカットの「晩腐病」「べと病」消毒と対処法/絶対にミイラ化させないぞ!!
べと病/晩腐病(おそぐされびょう)後の収穫量
まずは、「晩腐病(おそぐされびょう)」「べと病」になっても、収穫ができたのか?の報告です。
我が家のぶどう棚の大きさは2~3坪ですが、今回の収穫量は30房。
6月の時点では、大きな房が70あったのですが、病変した房を切除したため、最終的に収穫したのは30房でした。
そして、味は抜群。
形や色はいまいちでしたが、プロの親戚三軒のシャインマスカットより甘くて美味しくできました。
今になってみるとべと病/晩腐病の対処次第で、収穫量をもっと増やせたと反省しています。
「晩腐病」「べと病」の対処法、消毒・防除の記録
晩腐病(おそぐされびょう)発生
私が「晩腐病(おそぐされびょう)」に気づいたのは7月初旬。
粒抜き作業が終わり、ぶどうの粒がビー玉ほどに膨らんできた頃です。
せっかく膨らんだぶどうの粒が、ところどころ薄い茶褐色に変わり、ボトボトと下に落ち始めたのです。
あわてて、叔母に電話で確認。(叔母はプロのシャインマスカット農家)
叔母によると、「晩腐病」か「べと病」とのこと。長雨を警戒し、叔母の農園でも消毒を強化しているとのことでした。
「晩腐病(おそぐされびょう)」の特徴
「晩腐病(おそぐされびょう)」の特徴を調べてみると、
あわわ、ミイラ化するの?
たしかに、その年はまれにみる長雨。
梅雨前線の停滞により全国的に長雨が続き、各地で災害が起き、野菜も高騰していました。
「晩腐病(おそぐされびょう)」の 対処法、消毒
叔母によると、病変を切り落として、消毒、すぐに「かさかけ」「袋かけ」をするように言われました。
消毒薬は、黒とう病で使ったオンリーワンフロアブルでok。確かに、薬の裏を見ると病名が書かれています。
雨が止んだのを見計らって、ぶどう棚全体と、房を念入りに消毒。
薄い茶褐色になった粒を、ひとつひとつハサミで切り落とします。
粒抜きした後だったので、さらに粒数が少なくなって、房が寂しい状態に。
でも、シャインマスカットの粒は巨大に膨らむので、このくらいなら大丈夫と言い聞かせながら、病変した粒をせっせとハサミで切り落としました。数百粒です。
切った粒は菜園に捨てずに、菌が広がらないようビニール袋にいれてゴミ箱へ。
翌日の雨を考慮し、消毒はいつもの2倍の濃度で行いました。
雨続きで、チェックがおろそかになっていた黒とう病の枝葉も2~3発見。でもよく見ると、なんだか変。
葉の裏が真っ白になり茶色い斑点も出ています。これは・・・・?
べと病の発生 特徴と農薬
そういえば、叔母が「べと病」かも。と言っていたのを思い出し、調べてみると・・・
葉裏が白くなってる!!!
「べと病」も「晩腐病(おそぐされびょう)」と同じで、ミイラ化するのが特徴です。
もう一度叔母に電話で症状を話すと、やはり「べと病」でした。
が~ん!!
叔母によると、「べと病」には、「ジャストフィットフロアブル」や「ベトファイター顆粒」が効くとの事。
すでにオンリーワンチュアブルを散布した後だったので、病変した枝を切って様子を見るように言われました。
べと病の農薬は3,000円以上とお値段が張ります。
ここは、叔母の言う通り、少し様子を見ることにしました。
べと病の対処1. 切除作業
翌日から、すぐに病変した枝をすべて切除。
薄く茶褐色になったぶどうの粒も1粒ずつ切り取り、ビニール袋にいれて捨てるを繰り返します。
これで、安心。
ところが、翌朝ぶどう棚にいってると、また病変が!
あれだけ切り落としたのに、一晩で薄い茶褐色の粒が大量発生。
これをほおっておくと、ミイラ化してしまいます。ひゃぁぁ~。
すぐに「べと病」の薬を買いに行きました。
行ったのは、ぶどうの病気1(黒とう病)でお世話になった農家用品を扱う大型専門店です。
べと病対策2. 農薬散布
当初は、液体のジャストフィットフロアブルを購入予定でしたが、残念ながら農家用の大容量のものしかありません。
そこで、安くてべと病によく効く「ベトファイター顆粒」を購入する事にしました。
べと病の農薬/ベトファイター顆粒の希釈方法
ところが、ベトファイターって顆粒・・・・なんですよね。
顆粒の希釈はしたことがありません。
(液体の希釈方法は、ぶどうの病気1で解説しています)
お店の人に聞いてみると
顆粒の農薬を希釈する場合、料理用の小さじを使ってください。
料理用の小さじ1杯は5gです。
グラムgも、ccとmlと同じに考えて良いので5g=5cc=5mlになります。
顆粒を少量の水で溶かしてから、希釈して使ってください。
との事。つまり・・・
◆液体の農薬を1000倍に希釈する場合
農薬1mlにつき水1000ml (1ℓ)で割るので、
◆顆粒の農薬を1000倍に希釈する場合
農薬5g((小さじ1)につき水5000ml (5ℓ)で割るという事になります。
上の表のとおり、ぶどうの希釈は2000倍と定められています。
我が家の「噴射器」は4リットル用です。葉の少ないこの時期は、我が家の2~3坪のぶどう棚には農薬4ℓあれば十分です。
小さじ半分弱まで顆粒を入れて少量の水で溶かし、4ℓの水で割ることにしました。
農薬の混合はしてもいいの?
下は希釈しているところの写真。
ベトファイターの顆粒は、少ない水であっという間に溶けるので簡単です。
文頭で紹介した黒とう病の農薬「オンリーワンフロアブル」も混ぜたので、コーヒー牛乳色になっています。
えっ?農薬混ぜてもいいの?
と思った方、安心してください。ちゃんと専門家に聞きました。
じつは、ベトファイター購入時に、お店の人に「ベトファイターに、オンリーワンフロアブルを混ぜて良いか?」聞いたんです。
いちいち、農薬を分けて消毒するのって大変ですよね。
2度の作業をしなければなりません。
叔母から「プロの農家では混ぜて消毒してるよ、聞いてごらん」と言われ、危険はないか確認してみました。
お店の人によると、「農薬は混ぜて使用すると、相乗効果が2倍になり効くものと、混ぜると危険なものもある」そうです。
オンリーワンフロアブルと、ベトファイターを混ぜる場合、殺菌剤×2になるが、混ぜても危険はないとの事。
ぶ厚い農薬辞典?を持ってきて調べてくれた結果、過去に混ぜた使用例もあるから大丈夫との事でした。
ただ、多数回使うと、薬剤耐性菌の出現リスクが高くなるので、なるべくローテーション散布が良いとの事。
でも今回は急を要するので、混ぜて使っても良いとの事でした。
さて、消毒が終わりホッとしたのもつかの間。
翌日ぶどう棚に行ってみるとまた病変が!あわわ・・・
ここから、3~4日、私はムキになって切除→発生→切除→発生を繰り返します。
1粒残らず、ミイラは許しません!! みたいな感じで。
でも、毎日の切除。粒どころか房の切除も増えてきました。
実際、70あった房が30まで減りました。
そこで、やっと気づきました。
「袋かけ、かさかけ」は?
べと病対策3. 「袋かけ」「かさかけ」
叔母が、「袋かけ」や、「かさかけ」を早くしろと言ったのは理由があって、
袋かけをすることで、空気中にただよう菌の付着や発生をふせぐのです。
いくら消毒しても空気中の菌は殺せませんものね。
シャインマスカット農家は、消毒をしたら菌に触れさせないよう、すぐに袋かけをするそうです。
でも、当時の私は焦るばかり。袋かけにも疑問を感じていました。
密閉した袋の中では、ますます菌が繁殖するのでは?と感じたからです。
心配した叔母に、はやく袋をかけるように言われ、もう一度房によく消毒した後、やっと袋と傘をかけました。
叔母の言う通り、「袋かけ」「かさかけ」を早くしておけば、もっと沢山のぶどうを救えたのに残念です。
べと病から、収穫までの道のり
袋掛けが終わり、それでも心配で、毎日、袋のわずかな隙間からのぞいたり、袋の上から房の感触を確かめたり。
腐った粒が、いっぱい袋の中に落ちるんだろうな~
ミイラ化するんだろうな~
と、本気で思ってました。あんなに楽しみだった収穫も諦めモードです。
「黒とう病対策」も、どうでもよくなってきました。
こんなに、手がかかるシャインマスカットなら斬り倒してしまおうとさえ考えました。
ところが、何日たっても、袋の底に腐った粒が落ちてくる気配がありません。
長い梅雨が終わり。1か月後そっと袋をあけてみると。なんと立派なシャインマスカットが育っています。茶色い病変は1粒もありません。
あんなに粒を落としたのに、ジベレリンのおかげで、ほどよい大きさの房に育っています。
ベトファイターと、袋と傘が、菌から守ってくれたのです。
ここで学んだ袋掛けけ・傘かけの時期、遮光については別記事にまとめてあります。
そして9月、無事収穫を迎えました。
どうです?小ぶりだけどおいしそうでしょう。
県外で暮らす娘たちにも送ることができました。
晩腐病の被害がこのくらいで済んだのは、昨年の冬から黒とう病の防除と消毒をきちんと行ってきたからだと叔母に褒められました。
このときは嬉しかったですね~
来年はもっと早い時期からベトファイターで防除しなくてはと思いました。
べと病の消毒時期・かさかけ、袋掛けの時期
叔母による、「ベトファイター散布時期」「かさかけ」「袋掛け」の消毒時期、消毒以外の防除方法をまとめておきます。
べと病 後記
消毒の回数や毒性
その後、気になったのは消毒の回数と毒性です。
オンリーワンチュアブルを調べてみると「テブコナゾール」という殺菌効果がある水和剤のようで、人間への毒性はないとの事。
ただ、このような長雨が続いたり、黒とう病と併用して使用すると、どうしても農薬人に書かれた使用回数(2回~4回)を上回ってしまいます。
別のシャインマスカット農家の叔父に聞いてみると、農家では当たり前に規定回数を越えて消毒を行っているそうです。
そうしなければ、収穫できず、収入が得られないとのこと。専業農家さんは仕方がないのかもしれませんが、市販の果物って怖いんですね。
ただし、農薬の種類を変えて使用回数は守るとの事。
JAアグリさんにも問い合わせたところ、同じ農薬の規定回数を超えたり、消毒時期を守らないぶどうは出荷が出来ない決まりがあるそうなんです。
耐性菌を防ぐためにも、農薬はローテーションし、規定回数以内に収めるのが正しい消毒方法との事でした。
(散布回数、収穫時期を守らなければ違法であるし、残留農薬が検出されるとその地域は出荷停止になるそうです)
ただし、我が家の1坪ほどの家庭菜園では農薬の使用量は少なく、出荷しないこともあり、同じ農薬を使い続けても問題はないとの事でした。
ただし、耐性菌については注意が必要で、オンリーワンフロアブルは耐性菌被害はあまり報告されていませんが、
ベトファイターは耐性菌の報告があるので、できればローテーションして使ったほうが良いとの事でした。
今年は、長雨による晩腐病・べと病・灰色かび病の感染が、県内外のぶどう農家が被害を受け大きく報道されました。
どこのブドウ農園でも、ぶどう棚の葉が消毒薬で真っ白。
ぶどうの房自体は、袋がかかっているので消毒液をあびる回数は少ないとは思いますが、
絵の具の白を薄めてふりかけたくらいに真っ白な葉を見ると、恐ろしくなりました。
注意 読者からお便りをいただき解ったのですが、この白い液体は「ボルドー液」で、日本農林規格(JAS)の有機農産物栽培で使用できる安全な農薬と教えていただき安心しました。
つまり、使用してもオーガニックと表示できる農薬なんですね。大量に何度も撒いているわけではなく、混ぜた生石灰が残るので白くなるそうです。
見た目で危険と判断してしまいましたが、誤解を招かない為にも書き加えておきます。
静岡県植物防疫協会 有機JAS認定農薬 一覧
消毒を中止
我が家のシャインマスカットは、べと病農薬の散布、ぶどうの袋かけが終わった時点で、一切の消毒をやめました。
殺菌剤といっても、口に入れるのですから怖いですよね。
その後、快晴の日が続き、べと病、黒とう病は発生したり収まったり。
そのたびに、病気にかかった枝葉はすべて切除。けっこうの枝葉をおとしましたが、仕方ありません。
害虫は、つかまえて駆除。こんな虫さんたちです↓
これって、かなり暇でなければできない作業です。私は暇ではないんですけどね(笑)
消毒は、簡単でありがたいけど、我慢しました。
コガネムシトラップを作って駆除したりと大変でした。
コガネムシトラップの作り方はこちら↓
来年は、もっと計画的に散布を行い、出来るだけ少ない回数の消毒防除を行いたいと思います。
収穫以降の害虫駆除
収穫以降は、木を休ませ手入れは放置。そのため、ブドウカシスバや、トラカミキリにやられました。とほほ。
駆除方法はこちら、しぶしぶ農薬を使っています。害虫にやられた方は、参考にしてください。
まとめ ぶどうの病気4.シャインマスカットの「晩腐病」「べと病」消毒と対処法/絶対にミイラ化させないぞ!!
2021年春、シャインマスカット栽培も5年目を迎え、新芽がすくすく育っています。
➡5年目の収穫量を、 ぶどうの傘かけ・袋掛けの時期と、遮光ネット日焼け対策の方法 の文末に掲載しました。
皆さんも頑張って美味しいシャインマスカットを収穫してくださいね。それではまた。