プロのシャインマスカット農家のアドバイスを元に、シャインマスカットを育てて6年目の筆者が、家庭菜園でのシャインマスカット栽培の体験・コツを紹介しています。
このページでは、シャインマスカットの害虫「チャノキイロアザミウマ」の農薬や消毒方法を解説、症状が酷似している「かすり症」との違いもお話ししています。
シャインマスカットの症状に不安を持っている方の参考になれば幸いです。
シャインマスカットの害虫5★実が茶色に!チャノキイロアザミウマの消毒
「チャノキイロアザミウマ」は、新梢・葉・穂軸・果実を吸汁加害するシャインマスカットの害虫です。
体全体が黄色、体長約0.8mmの、老眼鏡で見ても解りにくい、小さな虫です。
もともと、茶の木に寄生していたアザミウマなので「チャノキイロアザミウマ」と呼ばれています。
6月以降に急増し10月頃まで発生、1世代の発育時期は15日~25日と短く、ひと夏に3世代も生育します。
我が家の場合、8月後半にシャインマスカットの実に「茶色いしみ」を見つけたことがきっかけで、この害虫を知る事になりました。
プロのシャインマスカット農家の叔母に聞くと、
ぶどうの実に「茶色いしみ」ができる原因は、「かすり症」か「チャノキイロアザミウマの被害」なんだけど、どっちも被害が似ているから解りにくいのよ~とのこと。
どっちだ~い ??
という事で「JAアグリ」さんに行き、被害写真を見てもらいました。
その結果、「かすり症」の可能性が高いとの診断でしたが、
「チャノキイロアザミウマの被害」と考えられる箇所もいくつかあったので、念のために消毒する事になったのです。
チャノキイロアザミウマの被害の特徴
1.葉が褐色または黒褐色になる
チャノキイロアザミウマに被害にあうと、吸汁された葉は、葉脈沿いの部分が褐色または黒褐色になり、ひどい場合は枯れてしまうそうです。
我が家のシャインマスカットにも、怪しい葉が数枚ありました。
2.穂軸が黒褐色になる
チャノキイロアザミウマに吸汁されると、ぶどうの穂軸が黒褐色になり、房に栄養がいかない為、脱粒の原因となります。
上の写真は、穂軸の色の違いがはっきり分かります。
我が家のシャインマスカットの穂軸は、少し黒い部分もありますが、どれも無事で綺麗な緑色した。
JAアグリの相談員さんも、
この房の穂軸は綺麗だから「チャノキイロアザミウマ」の被害ではなさそうだね。
この果実の「茶色いしみ」は、「かすり症」に間違いないね。
とのことでした。
シャインマスカットの「かすり症」とは、土壌の栄養不足(カルシウム不足)により、成熟期の果面にカスリ状の茶色いしみが現れる生理的現象で、
「チャノキイロアザミウマ」の初期被害とよく似ているんだそうです。
シャインマスカットの「かすり症」については別記事で詳しく解説しています。
3.果実がコルク化する
チャノキイロアザミウの被害の特徴として解りやすいのが、果実のコルク化です。
上の写真は、コルク化したシャインマスカットの房で、写真は茨城県のホームページからお借りしたものです。
チャノキイロアザミウマは、袋かけの締めが甘いと中に侵入し果粒を吸汁します。
果粒が吸汁されると、初めは「茶色いしみ」になりますが、しだい壊死してにコルク化してしまうそうなんです。
この初期の「茶色いしみ」が、ぶどうの「かすり症」と酷似しているという事なんですね。
こういう濃いシミは、とても怪しいそうです。
粒全体も、少しコルク化しています。
一部「コルク化した傷」も見つかりました。
JAアグリの相談員さんによると、「コルク化した傷」は、チャノキイロアザミウマ被害の特徴ですが、幼果期についた病原菌の傷が「かさぶた化」した可能性もあるとの事。
我が家のシャインマスカットは、
・コルク状になった房は、1房だけだった
・穂軸の色が綺麗だった
・葉の被害がほとんどない
などから「チャノキイロアザミウマの被害」ではなく「かすり症」と診断。
ただし、怪しい房もあるため、念のために消毒をしようということになったのです。
チャノキイロアザミウマの消毒と防除方法
通常、チャノキイロアザミウマの消毒は、6月上旬におこないます。
6月はチャノキイロアザミウマの第一世代が発生する時期ですから、叔母の果樹園でも、この時期に予防として消毒をするそうです。
チャノキイロアザミウマの有無は、黒い下敷きなどを受け皿にして、怪しい枝葉を叩くと落ちてくるので解るそうです。
事前に調べた、JAあいち経済連推奨「ぶどうのチャノキイロアザミウマの農薬 対策剤一覧」↓をJAアグリで見せたところ・・・
剤名 | 使用時期 | 移行性 | 速効性 | 残効性 |
---|---|---|---|---|
アドマイヤーフロアブル | 21日前まで | ◎ | ○ | ◎ |
★ダントツ水溶剤 | 前日まで | ◎ | ○ | ◎ |
コテッフロアブル | 14日前まで | △ | ◎ | ○ |
コルト顆粒水和剤 | 前日まで | ○ | △ | ◎ |
即効性があって、収穫前日まで使える、住友化学さんのダントツ水溶剤が良いとの事。
家にある「オルトラン」などもチャノキイロアザミウマに効き目がありますが、
ぶどうに使用すると益虫まで殺してしまい、葉ダニなどの大発生を促してしまう恐れがあるため、強い農薬は使用しない方が良いとのことでした。
JAさんの勧めもあって「ダントツ水溶剤」を購入することにしたのですが・・・
今は8月で、シャインマスカットは袋掛けした状態です。
「袋をすべて取って、消毒したほうが良いですか?」
と聞いてみると、
成長した果粒に直接散布すると、薬剤により果粒が汚れたり、変色する可能性があるとのこと。
収穫前の大切な時期なので、「袋はかけたまま」の消毒を勧められました。
袋をかけたままで、被害は収まるのかな~
という不安はありましたが、何もしないよりマシです。
ダントツ水溶剤は、綺麗な青い顆粒です。
裏面説明の「摘要害虫と使用法」を見ると、希釈は2000倍~4000倍とあります。
摘要害虫は、なんと・・・
今年被害にあったコガネムシ、
一昨年やられたブドウトラカミキリにも効くとあります!!
9月にはブドウトラカミキリの消毒を予定していましから、これは一石二鳥です!!
ブドウトラカミキリは、チャノキイロアザミウマより大きな害虫なので、2000倍を選択。
水に溶かすと、わずか数秒で溶けて鮮やかな青色に!!
ダントツ水溶剤はフタが目盛りになっているので、希釈に便利でした。
2000倍の希釈表を作りました↓
希釈倍率/ダントツ | 2ℓ | 3ℓ | 4ℓ | 5ℓ |
---|---|---|---|---|
2000倍 | 1g | 1.5g | 2g | 2.5g |
我が家の場合は、ダントツ水溶剤を2.5g
今年、新調した電動噴射機5ℓ(2000倍)で希釈して散布しました。
上の写真はダントツ散布から2週間経った、収穫間近のシャインマスカットの様子ですが、いくぶん枝葉が元気になった気がします。
果実の被害はそれ以上進まなかったので、しっかり効き目があったようです。
まとめ シャインマスカットの害虫5★実が茶色に!チャノキイロアザミウマの消毒
「チャノキイロアザミウマ」の被害は気づきにくいので、防除の消毒はとても大切です。
今回の私のように収穫前に袋を開けてみて気づき、あわてて消毒したからと言って、一度ついた茶色いしみ・コルク化は、直る事はありません。
来年の「チャノキイロアザミウマ」対策は
に気を配りながら、しっかり防除していきたいと思います。
それでは、素敵な家庭菜園ライフを楽しんでください。(^^)
参考文献
岡山県農林水産総合センター農業研究所
島根県 病害虫ベース
アリスタ ライフサイエンス農薬ガイド
★シャインマスカットの「かすり症」の原因と対処法については別記事で詳しく解説しているので参考にしてください。