シャインマスカットを育てて6年目の筆者が、3軒のプロのぶどう農家のアドバイスをもとに家庭菜園での「シャインマスカットの消毒時期」の貴重な知識や体験をまとめています。
ぶどうの消毒時期に特化した「シャインマスカット 消毒カレンダー」も作成。ぜひ参考にしてください。
NEW!! 栽培7年目、新たなシャインマスカット消毒カレンダー2を作りました。ぶどう棚が大きくなってきた方は必見です。
シャインマスカットの消毒時期★家庭栽培 消毒カレンダー1
ぶどう栽培において、ぶどうの消毒時期はとても重要です。
消毒時期が少しでも遅れると、ぶどう棚全体に病気が感染し、その年の収穫が全滅することもあるからです。
シャインマスカットは「黒とう病」や「べと病」にかかりやすい品種です。特に「黒とう病」は非常に感染力が強く、かかってしまってからの特効薬はほとんどありません。
というのも、シャインマスカットの農薬は、予防薬として使うものばかりなので、治療薬として使うと効き目が弱いからです。
ですから、1年間のぶどうの消毒時期をきちんと把握し、病気にかかる前に、しっかり消毒・殺菌する必要があります。
でも、消毒したからといって、安心できません。
どんなに消毒していても、かならず、毎年、病変は見つかります。
病気にかかってしまった枝葉は、こまめに切りおとして、菌が舞わないよう必ずビニール袋に密閉して処分するなどきめ細かい処置が必要です。
今からでもきっと間に合います。頑張って見事な房を収穫してくださいね。
我が家のシャインマスカット 黒とう病×奮闘記まとめ・消毒のコツはこちら↓
家庭菜園のシャインマスカットに使う農薬
前回の記事でお話しした通り、プロの農家と販売店に相談した結果、次の5つの農薬を使うことに決めました。
プロが使う農薬はアール計算で容量も大きいので、家庭菜園用に容量が少ないものをチョイスしてもらいました。
今のところ下の5点で病害虫防除に十分に効き目があり、しっかり収穫もできています。
晩腐病・黒とう病・さび病・灰色かび病・うどんこ病などの消毒
農薬 | ぶどうの病気 | 消毒効果 |
---|---|---|
オンリーワンフロアブル | ★殺菌・消毒効果があります 晩腐病・黒とう病・さび病・灰色かび病・うどんこ病 すす点病・褐斑病・白腐病 |
べと病・晩腐病の消毒
農薬 | ぶどうの病気 | 消毒効果 |
---|---|---|
ベトファイター | ★殺菌・消毒効果があります べと病・晩腐病 |
ハダニ類の消毒
必要に応じて消毒します。
農薬 | ぶどうの病気 | 消毒効果 |
---|---|---|
カネマイトフロアブル | ★病害虫類駆除 ハダニ類 |
害虫類駆除の消毒・殺菌剤
必要に応じて消毒します。
農薬 | ぶどうの病気 | 消毒効果 |
---|---|---|
スミチオン | ★害虫類駆除 ブドウスカシバ ブドウトラカミキリ カナブン・コガネムシ類 カメムシ | |
トップジンペースト | ★病患部を削り取った後の傷口の殺菌保護被膜 |
シャインマスカット 年間消毒カレンダー
こちらは、シャインマスカットの消毒時期ごとの年間カレンダーです。
JAアグリさんの消毒カレンダーを参考に作っています。
知りたい消毒時期、月をタップすると、詳しい消毒内容がわかります。
消毒時期 | 殺菌消毒 | 害虫駆除消毒 |
---|---|---|
休眠期 | ||
1月中旬~下旬の消毒 | ◆殺菌消毒×1回 (前年ひどかった場合) | 粗皮削りをした場合 害虫駆除1回 |
3月下旬の消毒 | ◆殺菌消毒×1回 | |
4月中旬の消毒 芽が出てきたころ | ◆殺菌消毒×1回 | |
5月の消毒 展葉9~10枚 開花直前 | ◆殺菌消毒×3回 | |
6月の消毒 ジベレリンの合間に 袋掛け直前は念入りに | ◆殺菌消毒×3~4回 | 害虫駆除(必要に応じて) カメムシ ドウガネブイブイ コガネムシ |
7月~8月の消毒 | ◆殺菌消毒×2~3回 | 害虫駆除1~2回 葉ダニ (必要に応じて) |
9月の消毒 収穫後 | ◆殺菌消毒×1~2回 | ●害虫駆除 (必要に応じて) |
10月の消毒 | ●害虫駆除1~2回 ブドウカシスバ ぶどうトラカミキリ |
1月の消毒 (前年度にひどかった場合・皮削り後)
前年度にぶどうの病気の感染がひどかった場合
前年度にぶどうの病気の感染がひどかった場合は、冬の剪定後すぐに消毒を行います。
寒い時期なので、菌はまだ眠っている時期ですが、枝やつるを綺麗に取り除いた後、念の為に、「オンリーワンフロアブル+ベトファイター」の混合で殺菌消毒を行います。
シャインマスカットの剪定方法は別ページで、1・2・3年目ごとに解り易く図で解説しています。
農薬の混合について
シャインマスカットの農薬は病気ごとに数種類ありますが、いちいち分けて消毒するのは面倒なので、農薬販売員の指導のもと、現在は農薬を混ぜて使用しています。
混ぜる農薬、実際に混ぜて使用している例は↓別ページで紹介しているので、参考にしてください。
粗皮削りをした後
5~6年目のぶどうの場合、皮と皮の間に、害虫が卵を産んだり病原菌がはいこむので、粗皮削りを行います。削った後は、念のためスミチオンで消毒しましょう。
ぶどうの粗皮削りの方法は別ページで詳しく紹介しています。
3月の消毒
3月下旬は少し暖かくなり、冬眠していた菌が目を覚ます時期です。
新芽が出る4月になる前に、黒とう病・晩腐病・べと病・さび病などの消毒を1回行います。
農家では農薬の使用回数が決められているので数回の使用で農薬を変えますが、我が家は家庭菜園なので、昨年良く効いた「オンリーワンフロアブル」「ベトファイター」を使います。
我が家のシャインマスカットは、3年目の夏にひどい黒とう病にやられ、収穫量が半分以下に落ちました。
黒とう病は新芽を枯らすだけでなく、下の写真のような黒い斑点がついたブドウになって食べれません。
前年、黒とう病にかかった場合、怪しかった場合でも、ぶどう棚全体はもちろん、エアコンの外扇機の裏や、塀まで念入りに消毒しました。
黒とう病・晩腐病の症状、消毒薬、希釈方法については別ページで詳しく解説しています。
【黒とう病・べと病・晩腐病・さび病・晩腐病などの農薬】
4月の消毒
4月になると、いよいよ萌芽が枝の節に沢山出てきます。芽が生えそろったら、予防のための消毒を1回行いましょう。
我が家の場合、樹が若くて消毒範囲が狭い1年目~5年目までは、「オンリーワンフロアブル」「ベトファイター」だけを使ってきました。
しかし、6年目から農薬に耐性菌ができたのか、葉の病変を多く発見するようになりました。
そこで、耐性菌や農薬残留を防ぐ為、違う農薬に切り替えています。
5月の消毒
5月は「合計3回」の消毒を行います。
JA農業組合防除カレンダーでは、「5月はべと病防除にもっとも重要な時期、散布開始が遅れないようにしましょう」と明記されています。
シャインマスカットにとって梅雨前は病気防除の大切な季節、消毒遅れは命取りになります。しっかり消毒を行いましょう。
下の写真は、我が家のシャインマスカットがベト病になった時のものです。べと病は長雨の多い年に多く発生します。
葉裏に真っ白いかびが生え、褐色の病斑を形成します。
ぶどうの粒も晩腐病と同じく、鉛色になってミイラ化し、せっかく大きく育たぶどうの粒も、腐ってぼとぼと落ちてしまいました。
5月になったら、しっかり散布を行いましょう。
こちらも「ベトファイター」と「オンリーワンフロアブル」の2薬を混ぜて散布しています。
【べと病の農薬はこちら】
べと病・晩腐病の防除対策、農薬の希釈方法、消毒の回数や毒性についてはこちらのページで詳しく解説しています。
6月の消毒
ジベレリンの合間に、天気予報を見ながらこまめに消毒
シャインマスカットは、6月は初旬から下旬にかけて「3~4回」の消毒を行います。
ジベレリンの合間に行う消毒ですから、この時期は大忙しになります。
6月の梅雨時期は病原菌が広がりやすいので、消毒をうっかりしてしまうと命取りです。病気がひどいときは、必要に応じて薬剤散布を増やします。
プロのシャインマスカットの叔父には、1週間おきを目安に散布をするよう言われました。
でも、そんなに消毒をして大丈夫なのか。
農薬に記載してある「使用回数」を超えてしまっているけど?
という質問をしてみると、
農家では、農薬の種類を変えて使用回数を守り消毒を行っているとの事。(散布回数、収穫時期を守らなければ違法であるし、残留農薬が検出されるとその地域は出荷停止になるそうです)
ただし、家庭菜園では1本3000円ちかくする農薬を買いきれないし、使用量も少ないため同じ農薬を使っても問題ないとの事。
ただし「べと病」などは耐性菌が発生するので、できれば別の農薬をローテーションで使ったほうが効果があるとの事でした。
梅雨時期は月の半分雨が降るため、農薬は雨に流され殺菌効果が薄れてしまうので、5月~6月はだいたい、週1回の消毒になるそうです。
天気予報と、ぶどうの葉の健康状態を見ながら、消毒の回数を調節すると良いですね。
6月はカメムシの産卵時期
6月はカメムシの産卵時期です。
ぶどうの葉の裏に、卵を見つけたらすぐに切り取り、駆除しましょう。前年、カメムシが大量発生していた場合は、スミチオンで消毒すると効果的です。
シャインマスカットの害虫「クサギカメムシ」については別ページで詳しく紹介しています。
袋掛け直前の消毒は必須!!
袋掛け直前は念入りの消毒が必須です。
これを怠ると、袋の中に菌や胞子が入り込み、病気だらけの腐った房になってしまうからです。
収穫時に、袋を開けてがっかり・・・という事になりかねません。
今年の我が家の袋掛けは、消毒後すぐに雨が降ったので心配でした。
大失敗の経験から、この時期、ほんとうに神経を使います。
昨年、初めての試みとしてハンドスプレーボトルに消毒液をつくり、房だけを消毒殺菌。
少しでも怪しく変色している粒や副穂は切除。
数時間後、乾いてから袋掛けをしました。
しかしこれは失敗、この年、シャインマスカットのかすり症が発生、そばかすのような斑点が出てしまったんです。
房だけ殺菌スプレーしたことが原因か解りませんが農薬によっては果実に汚れが生じる場合があるとの記載があったので、今年は過度に使用しない事にしました。
ぶどうの傘かけ・袋掛けの時期 は単純そうに見えて、非常に重要で、ぶどうの収穫量を左右します。詳しくは、別ページで紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
7月~8月の消毒
7月~8月は、害虫発生が多い月なので、害虫駆除の農薬散布を行います。
袋掛けが終われば、さほど神経質にならなくて良いですが、べと病・黒とう病などの病気が発生した場合などは、必要に応じて殺菌消毒をしましょう。
ドウガネブイブイ・コガネムシの駆除
7月になり暑くなるとドウガネブイブイ(カナブンにそっくり)や、コガネムシなどにぶどうの葉を食い荒らされます。見かけたら捕まえて駆除、スミチオンで消毒を行います。
消毒を抑えたい場合は、トラップを作って捕獲すると良いです。
ドウガネブイブイや、コガネムシのトラップの作り方や、捕獲方法は別ページで詳しく解説しています。
ハダニの駆除消毒
暑くなると「ハダニ」が発生します。
ブドウハモグリダニは、上の写真のように、葉がぶつぶつしてくるのですぐに解ります。
被害が多くなると、ハダニに栄養をとられ、葉が枯れて落ち、果粒の肥大や着色も不良となり糖度があがらなくなります。
ぶどうの葉につく「ハダニ」に効く農薬は「カネマイトフロアブル」です。
前年度に発生した場合は、防除のため、梅雨が終わったらすぐに「ハダニ」駆除消毒を行いましょう。
「ハダニ の防除方法は、ぶどうの葉の病気?葉が枯れる・ぶつぶつするのは「ハダニ」の仕業だった!!で解説しています。
9月の消毒
9月から10月は、さび病に注意です。
我が家のシャインマスカットは、5年目にしてはじめてやられました。
ぶどうの葉に、黄色いサビた鉄粉のような「糸状菌(しじょうきん)」がいっぱい。
さび病は、直接ぶどうの実に被害を及ぼすことはありませんが、葉から葉へ伝染し早期に落葉してしまう、ぶどうの病気です。
落葉してしまうと栄養を蓄えられず、ブドウの果実の品質が落ちることはもちろん、枝ぶりも悪くなり、来年の収穫に影響するのですぐに消毒をしなければなりません。
この時期、収穫が終わったらすぐに、予防のために消毒を行うと良いですね。害虫消毒も必要に応じて行いましょう。
我が家でさび病に効いたのは、黒とう病と同じ、オンリーワンフロアブルです。
詳しくは、ぶどうの病気「さび病」の薬剤と防除法で解説しています。
10月の消毒
秋にかけて暑くなると、チャノキイロアザミウマやカメムシなどの害虫が発生します。
こんなのがいたよ↓
こちらは、8月にいた虫さんですが、消毒ではなくつまんで駆除しました。すきまなく袋掛けをしておけば、房への被害はほとんどありません。
10月以降に発生するブドウカシスバや、ぶどうトラカミキリは、柔らかい枝の中を食べ進んでしまうので、スミチオンでの消毒散布が必要です。
太い枝まで食害された場合は、枝をほじって害虫を取り出し、傷ついた枝はトップジンペーストで補修作業をしなければなりません。
様子を見ながら、9月~10月は害虫駆除消毒を1~2回行うと良いですね。
我が家のシャインマスカットの害虫駆除・駆除のコツ・消毒の様子・枝の補修作業・動画等はこちらで紹介しています。
以上で、1年間のシャインマスカットの消毒時期の紹介は終了です。
ブドウ棚が大きくなってきたら
NEW!! 2023年栽培7年目になり、ぶどう棚も大きく成長してきました。
そこで、JAアグリ相談員さんの指導の下、新たな農薬に替えてシャインマスカット消毒カレンダー2を作りました。
「オンリーワンフロアブル」+「ベトファイター」の組み合わせで、効き目が弱くなったと感じた人はぜひご覧ください↓
まとめ ぶどうの消毒時期★シャインマスカット家庭栽培 消毒カレンダー1
殺菌消毒はすべて、「オンリーワンフロアブル」+「ベトファイター」の組み合わせです。
消毒時期 | 消毒回数 | 農薬 |
---|---|---|
休眠期 | サビダニ類・カイガラムシ類 | |
1月中旬~下旬の消毒 | ◆殺菌消毒×1 (前年ひどかった場合) | 殺菌剤(黒とう病・べと病・さび病・晩腐病など) |
3月下旬の消毒 | ◆殺菌消毒×1 (前年ひどかった場合) | 殺菌剤(黒とう病・べと病・さび病・晩腐病など) |
4月中旬の消毒 芽が出てきたころ | ◆殺菌消毒×1 | 殺菌剤(黒とう病・べと病・さび病・晩腐病など) |
5月の消毒 展葉9~10枚 開花直前 | ◆殺菌消毒×3 | 殺菌剤(黒とう病・べと病・さび病・晩腐病など) |
6月の消毒 ジベレリンの合間に 袋掛け直前は念入りに | 6月の消毒 ◆殺菌消毒×3~4回 ◆害虫駆除 (必要に応じて) | 殺菌剤(黒とう病・べと病・さび病・晩腐病など) ◆カメムシ駆除 |
7月~8月の消毒 | 7月~8月の消毒 ●害虫駆除消毒1~2回 ◆殺菌消毒×2~3回 (必要に応じて) | 殺菌剤(黒とう病・べと病・さび病・晩腐病など) ●カネマイトフロアブル(葉ダニ) |
9月の消毒 収穫後 | 9月の消毒 ◆殺菌消毒×1~2回 ●害虫駆除消毒 (必要に応じて) | 殺菌剤(黒とう病・べと病・さび病・晩腐病など) |
10月の消毒 | ●害虫駆除消毒1~2回 (必要に応じて) | ●スミチオン 殺菌剤(ブドウカシスバや、ぶどうトラカミキリ) |
参考文献 山梨県農研機構果樹研究所 住友化学園芸 神奈川農業技術センター JA農業組合防除カレンダー