交通事故を起こし「物損事故」か「人身事故」か悩んでいる人に、どちらにするか判断する決め手や、切替時の注意点などを、実際にあったケースをもとに解説しています。
案内するのは、自動車損害保険募集人資格・傷害疾病保険募集人資格・火災保険募集人資格・生命保険募集資格を持つ、オートディラーの「長嶋」が50年の経験をもとに、ご案内いたします。
交通事故 物損か人身の判断方法/人身に切り替えたほうが良い実例を解説
「物損事故」「人身事故」どっちらになる?
先日、交通事故を起こしたお客様から
「相手は軽いムチ打ちだったけれど「物損事故」か「人身事故」どちらになりますか? 。
と、ご相談がありました。
信号のない交差点でお客様の前方不注意の為起きた衝突事故です。
念のため双方病院に行ったところ、お互いに軽いむちうちと診断されたそうです。
交通事故はこの「診断書」を警察に提出した時点で「人身事故」扱いとなります。
お互いが怪我をして、どちらか一方が「診断書」を出して、もう一人が出さなかったとしても「人身事故」扱いとなるのです。
ところがこういった軽い怪我の場合、警察は「物損事故」で処理することがほとんどです。
「物損事故」つまり「物(車)だけ壊れた事故」扱いにするという事です。
「人身事故」なのに物損事故で届けていいの?
お互いに怪我をしたのに、なぜ警察官は物損事故で扱ったのでしょうか?
そんなことをして保険はおりるのか?疑問に思いますよね。
物損事故で届けたほうが得をする場合
互いにかすり傷程度なのに「人身事故」で届け出すると、双方ともに重い行政処分を受けなければなりません。
つまり「物損」で処理してもらった方が双方ともに得になるのです。
運転免許証は、基本2点減点、相手の怪我の重さでで減点が増えます。
1カ月を超える診断、過去に減点がない方でも、1カ月以上の免停~・罰金20万円~50万円とかなり厳しい行政処分を受けなければなりません。
しかし、「相手に重い罰を望まない・双方とも軽い怪我」の場合、この点は警察や保険会社は承知していて、「物損事故」として処理してくれますし、自動車保険も支払われます。
◆警察 「人身事故」であっても、むち打ちなどの軽傷の場合、 お互いに人身事故を望まないのであれば、物損事故として受付けてくれる |
◆保険会社に「物損事故」で届けても、 ・医師の診断書 ・警察の「交通事故証明書」(物損でも良い) があれば保険から治療費・通院費はおりる |
◆怪我をしたのに物損事故になった例
私の話ですが、以前、高齢者の踏み間違いで追突をされ、軽い「むち打ち」になったことがあります。
警察署に「診断書」を持って行ったところ
「相手の方に、重い罰を望みますか?」
と、警察官に聞かれました。
「いえいえ、高齢者で、反省されて何度も謝りに来られましたし、次から注意していただければよいです」
と答えると、それでは「物損事故」として処理しますね。
と、警察官は「診断書」を受け取りませんでした。
各都道府県県警によっても対応は異なるようですが、検査通院や、軽い「むちうち」など数日で完治するような診断は、被害者が加害者へ厳しい罰を望まない限り「物損事故」として扱う事が多いようです。
「物損事故」か「人身事故」かはいつ決まるの?
「物損事故」か「人身事故」かは、被害者が「診断書」を警察に出した時点で決まります。
診断書は「事故直後」に病院に行って診察を受け、書いてもらう必要があります。
事故から数日たってからでは、交通事故と怪我との因果関係が立証されなくなってしまうので、当日もしくは翌日に「診断書」を書いてもららわなければなりません。
医師に書いてもらった「診断書」は、警察へなるべく早く届けなければなりません。
「診断書」の提出期限は10日~2週間までに提出するのが望ましいと言われています。
つまり、事故から2週間前後までには「物損事故」か「人身事故」かが、はっきり決まる事が多いです。
相手が「診断書」を出して「人身事故」扱いになった場合、必ず警察署からあなたに連絡がきます。
「人身事故」として調書を取り直したり、大きな事故の場合は再度現場検証をすることもあります。
不安な場合は警察署に直接電話をして「どちらになったか」、まだ決まらない場合は「どうしたいか」相手の意向もさりげなく聞いてみるとよいですね。
「物損」から「人身」への切り替え期限
当初「物損事故」で届けていても、途中から「人身事故」に切り替える場合があります。
この場合、医師の診断書を警察に届けなければなりません。
医師の診断書の提出期限は10日~2週間までが望ましいようですが、県警や場合によって判断が異なるようで1カ月もかかったお客様もいました。
28歳 会社員男性 A様 県外で車×車の接触事故/打撲やむちうちで1カ月の怪我 双方5:5の事故 罰金や点数が引かれるのが嫌だったので、物損で届け出た。 しかし相手が人身事故にすると警察官が連絡があり、どうしたらよいか迷っていると、こちらも人身事故にするように言われた。 事故現場が県外で、すぐに「診断書」を持って行けない言うと、調書の作り直しが1カ月後ぐらいになるから、その時ついでに「診断書」を持ってくるよう言われた。 もし裁判などになった時、「診断書」の提出が遅いと不利になるようなことを聞いたが、大丈夫か? と警察官に確認したが、事前に警察官が「診断書」の内容を聞いた場合はまったく問題ないと言われた。 |
「物損事故」か「人身事故」かはっきり決められず不安な人は、担当警察官に相談してみましょう。
「人身事故」にした方が良いケース
お客様の中には、軽いムチ打ちだったのにもかかわらず「人身事故」にしたお客様もいらっしゃいます。
たとえ小さな怪我でも、後々の事を考え人身事故にした方が良い場合もあります。
私が対応したお客様で実際に「人身事故」にしたケースを紹介します。
実際に「人身事故」にした例 7つ
ケース1◆高齢者の母/軽いムチ打ちでも、後々支障があるのではないか心配 念のために通院をしたが、ほとんど症状がなかった。しかし、高齢者なので後々後遺症が現れるのを心配し「人身事故」で処理してもらった。 |
ケース2◆加害者を適切に処分してほしい。重い罰を与えて欲しい。 飛び出しの接触事故。小さなお子様で、軽い怪我。 飛び出したお子様にも過失があったのにもかかわらず、かなりお怒りで人身事故にされました。 |
ケース3◆借りた車だった 事故の車が借りたものだと解ったため、不安を感じ「人身事故」で届けた。「人身事故」で届け出る事で、事故を起こした当事者だけではなく「車の持ち主」にも「運行供用者責任」が発生します。その為、事故を起こした当事者が最悪、逃げてしまっても車の持ち主に賠償してもらえるので、「人身事故」で届けたほうが良い場合もあります。 |
ケース5◆警察官に勧められたから お互いに軽い怪我をしていたが、穏便に「物損事故」で済ませたいと申し出たところ、警察官から熱心に「人身事故」にするよう勧められた。訳を聞いても口を濁すのでおかしいと思っていたら、相手がその土地のヤクザ?不良?だった。 |
ケース6◆事故の相手の態度が怖い お互いに過失があるのに、一方的にこちらが悪いと怒鳴られた。 さらに夜遅く自宅に電話がかかってきて、事故時に警察に連絡したスマホの通話料金まで請求されたので怖くなって「人身事故」扱いにした。 |
ケース7◆ちょっと変な人? 模型を作って毎日警察に行く 事故の相手が自分は悪くないと言い張り、車と事故現場の「模型」を作って警察に出向き、自分の正当性を毎日話すと聞いて驚いた。たいした怪我ではなかったが、執拗さや異常さに恐怖を感じ「人身事故」にした。 |
まとめ 交通事故 物損か人身の判断方法/人身に切り替えたほうが良い実例を解説
交通事故を起こしてしまったら、「物損事故」か「人身事故」のどちらになるのか心配になりますよね。
仕事中の事故だったり、違反点数・経済的事情などがある人はもっと不安です。
事故を起こしてしまって、怪我がある場合
まず初めに、被害者の方にお見舞いのお電話を入れる事、
元気そうなら箱菓子を持って自宅にお詫びに伺う事などをアドバイスしています。
軽いむちうちや、1日の検査通院で済むような場合は「穏便」に済ませもらえるよう被害者に頼んでみましょう。
「人身事故」は、怪我をした被害者が「診断書」に出した時点で「物損事故」から「人身事故」に変わってしまいます。
その前に、きちんとお詫びをし「物損事故」で済ませもらえるようお願いしてみましょう。
怪我をしたら、本来は「人身事故」として処理するのが当たり前です。
しかし、被害者が重い罰を望まない限り、ほとんどの県警で事故の程度や怪我の度合いで「物損事故」として穏便に処理してくれます。
双方が怪我をした場合、中には重い罰を望む方もいらっしゃいますが、お互いに罰金や免停になっては損ですよね。
大きな怪我の場合は無理ですが、両者で話し合って「物損事故」として示談にする事も可能。
自動車保険も交通事故証明書があれば、「物損事故」でもきちんと支払われます。
相談する人がいない場合は、保険会社や保険代理店に相談してみましょう。
良い方向に進むと良いですね。おだいじに。