今回は自動車保険の加入や、継続を検討されている人むけに「搭乗者傷害保険」と「人身傷害保険」の疑問についてお答えしていきます。
・「搭乗者傷害保険」と「人身傷害保険」は両方必要? ・「人身傷害保険」だけでいいんじゃないの? ・「人身傷害保険」や「搭乗者傷害保険」の違いって何? ・どちらに加入すればいいの? ・助手席などの同乗者も保険がおりるの? ・慰謝料や休業損害がおりるのはどっち? ・「人身傷害保険」でおりる慰謝料や休業損害の補償金額は? |
案内するのは、保険代理店・運輸局認証車検工場を営むオートディラーの「長嶋」です。自動車損害保険募集人資格の他、傷害・火災・生命保険募集資格を持つ保険のエキスパートです。50年の経験をもとに実際に起こった事故トラブルの解決方法を解説しています。
搭乗者傷害保険と人身傷害保険は両方必要?2つの補償を比較してみた
自動車保険には、傷害に関するリスクを補償する保険として「人身傷害保険」と「搭乗者傷害保険」があります。
搭乗者傷害保険と人身傷害保険は両方必要?
搭乗者傷害保険と人身傷害保険は両方必要か?とよく問われますが、
最近は「人身傷害保険」のみを担保されるお客様がほとんどで、搭乗者保険と人身傷害保険の両方に加入するお客様は少なくなりました。
なぜなら、搭乗者傷害保険を担保する必要性がなくなったからです。
20年ほど前までは自動車保険に「搭乗者傷害保険」をつけるのが一般的でした。
しかし現在では、搭乗者傷害保険の補償をカーバーする「人身傷害保険」が発売されたからです。
また、搭乗者傷害保険は、単体で加入したくても保険会社にほぼ断られます。
人身傷害保険を担保後、搭乗者傷害保険を「特約」という形で付帯する引き受け方がほとんどです。
搭乗者傷害保険と人身傷害保険は両方加入できる?
搭乗者傷害保険と人身傷害保険は、両方加入することができます。
実際、私は自動車保険に「人身傷害保険と搭乗者傷害保険」の両方を付帯しています。
しかし、最近の搭乗者傷害保険は「死亡時または後遺障害を被った場合」にのみ保険金が支払われるため、大きな事故でない限り使う事はありません。
おまけに、搭乗者傷害保険を付けると保険料が高くなりますから、ほとんどの人が人身傷害保険だけの場合が多いのです。
私のように両方付帯する人はお守り感覚で加入しているといったところですね。
では、搭乗者傷害保険の補償をカーバーする「人身傷害保険」とはどのようなものなのでしょうか。詳しく説明していきますね。
人身傷害保険の特徴
1.過失の有無なく、全額が支払われる
人身傷害保険の一番の優れた点は、運転者が事故で死傷した場合、過失の有無に関係なく実際に生じた損害額に対して支払われる事です。
2.示談を待たずに支払われる
また、加害者との示談交渉に煩わされることなく、示談成立を待たずに損害額全額を保険会社から受け取る事が出来るメリットもあります。
実際事故で通院したお客様の感想として、過失があるのにもかかわらず、自分で治療費を支払う事がなくスマートに治療が受けられ助かったという声をいただいています。
同乗者すべてに保険が支払われる
人身傷害保険では、正規の乗車装置に搭乗中の者すべてに保険が支払われますので心配いりません。
助手席や後部座席に座っている方が怪我をした場合も保険金は支払われます。
人身傷害 保険金を5000万とした場合の例
人身傷害における損害は「治療に関わる費用」「休業損害」「慰謝料」などが支払われます。
交通事故の損害額が3000万で過失割合が「自分4:相手6」の場合、
◆人身傷害保険なし
自分の過失1200万円が自己負担になってしまいます。
自分の過失1200万/自己負担 | 相手の過失1800万/相手からの損害賠償 |
◆人身傷害保険あり
自分の過失を含めた全額が保険会社より支払われます。
全額補償3000万円 |
搭乗者傷害保険の特徴
搭乗者傷害保険は、事故で被害を被った搭乗中の者に「定められた額」を補償する保険です。
「人身傷害保険」と違って、「休業損害」「慰謝料」は支払らわれません。
人身傷害保険のような実損払い(かかったもの全額支払い)ではなく、1日1万円などの「定額支払い」になります。
その為、大きな自損事故をおこして手術代100万円を病院から請求されたとしても、契約時に決めた定額払いの金額しか支払ってもらえません。
また、搭乗者傷害保険は保険加入自動車に搭乗中の場合にしか保証されません。人身傷害保険は、搭乗中だけでなく歩行中や「他の自動車」に搭乗中の自動車事故にも保障されるタイプがあります。
搭乗者傷害保険と人身障害者保険の比較
補償内容の違い
搭乗者傷害保険と人身障害者保険を比較すると補償内容に次のような違いがあります。
人身障害者保険 | 搭乗者傷害保険 |
◆実損払い 過失割合に関わらず保険金額を限度に下記すべての損害額が支払われる。 ・怪我による治療費 ・休業損害 ・慰謝料 ・死亡/後遺障害等に係る逸失利益等 |
◆定額払い あらかじめ設定された保険金額に応じて、一定額の保険金が支払われる。 ・怪我による死亡・後遺障害 (入院、通院) |
搭乗者保険を引き受ける場合
では、「搭乗者保険」のみを引き受ける「特殊な場合」とはどんな時なのでしょうか?
過去に私が引き受けをしたお客様ではこんな方がいらっしゃいました。
1.経済的理由で格安保険料を望む人 2.軽トラなど自宅の畑・敷地の中しか乗らない人 3.事業用の車など最低保障で良い物 4.通勤車に「搭乗者保険」が必須だと会社から言われた人 |
注・・・搭乗者傷害保険を取り扱っていない保険会社もあります。
15年ほど前まで自動車保険は「対人+対物+搭乗者」が主流でした。
この「搭乗者」を付帯することが慣例となっている企業があり、4.のように通勤車は「搭乗者保険」が必須だと厳しく言われる場合もあるようです。
この場合、「対人+対物+人身傷害+搭乗者」で引き受ける事がほとんどです。
人身障害者保険の慰謝料/休業損害はいくら?
自賠責保険から先に支払われる
慰謝料/休業損害は基本的に、自賠責保険から先に支払われます。
ただし、自賠責保険の「傷害による損害の限度額」は1事故1名あたり120万円と決められています。ですから
・治療費関係、診断書などの文書料他 (実費) ・休業損害 (源泉徴収提出、所得に応じる/主婦等は1日5,700円) ・慰謝料(基本的に1日4,200円) |
の総額が、120万円を超えた場合に「人身傷害保険」から支払われます。
人身傷害保険から支払われる額を問い合わせてみた
自賠責保険の120万を超えた場合の「人身傷害保険」から支払われる慰謝料/休業損害はいくらなのか、実際に保険会社に問い合わせてみました。
問い合わせた保険会社は大手のAとMの2社です。
2社とも回答は同じで、人身傷害保険から支払われる慰謝料/休業損害は
・自賠責保険と同じ補償額は支払わない ・自賠責保険の補償額より1~2割ほど少なくなる |
との事でした。
つまり、自賠責保険の下記↓の金額よりも安くなるという事です。
・休業損害 (源泉徴収提出、所得に応じる/主婦等は1日5,700円)
・慰謝料(基本的に1日4,200円)
自賠責保険より補償額が少ない理由は、人身傷害保険「独自」の計算方法で行うとの事です。
実際に慰謝料や休業損害をもらったケースは別のページで解説しています。
人身傷害保険から支払われる額が不服の場合
人身傷害保険独自の計算方法では保証額が小さく、もらえる金額が少なくなってしまいます。
これを不服とするなら、弁護士を雇って自賠責保険以上の補償額を支払ってもらう事も可能です。
この弁護士というのは、自動車保険に付帯している「弁護士費用特約」での弁護士ではありません。
「弁護士費用特約」での弁護士は、過失等で相手ともめた場合には役に立ちますが、補償費用の事では役に立たないケースがほとんどです。
交通事故・慰謝料に強い弁護士を公益財団法人 日弁連交通事故相談センターで探して、交渉してもらうと良いでしょう。
まとめ 搭乗者傷害保険と人身傷害保険は両方必要?2つの補償を比較してみた
自動車保険には「人身傷害保険」と「搭乗者保険」の両方は必要ありません。
「人身傷害保険」だけに加入する人がほとんどですが、補償額に不安を持つ人は、死亡時や後遺障害時に保証が厚くなる「搭乗者傷害保険」に加入しましょう。
「搭乗者保険」だけ加入するタイプの保険は、最近ほとんど販売されていません。
「搭乗者保険」は、「治療費のみ定額支払い」なので大きな事故の場合の補償が十分ではないからです。
「人身傷害保険」は過失割合に関係なくすべての治療費・慰謝料・休業損害等が実損払いで支払われます。
「搭乗者保険」だけの人は、ぜひ保険の見直しを検討してみてください。